月に一度当院のER症例振り返りカンファレンスにファシリテーターとしてお越しいただいています.救急外来で経験した悩ましい症例や勉強になる症例,みんなに共有したい症例を岩田先生と一緒に振り返ります.
10月29日のカンファレンスはオンラインで開催しました.
今回の症例提示は,2年次のY医師.
ERローテ中の平日の昼間15時頃,救急車で搬送された50歳代男性のケースです.
主訴は右背部痛と呼吸苦.数か月前より食欲が低下,搬送当日の午前中は自宅でテレワークをしていてお昼頃から右背部痛が増悪し,息が吸えないほど苦しくなったため救急要請しました.
病院到着時,血圧が低くショックバイタルでしたが,意識清明で呼吸が苦しいと言いながらもSpO2は良好でよくしゃべる様子がありました.
「よくしゃべる」というのは脳血流低下の徴候の可能性もありますね、と岩田先生のコメントがありました.
「それで,Y先生はまずなにから始めようと考えたのですか?」と岩田先生が問いかけます.
Y医師は「まずはショックバイタルの立て直しから考えないといけないと思いました」と答えました.
その後,必要な検査を考え,ショックの原因検索をすすめていきましたが,ショックの原因となる所見はみられず,八方塞がりだ…どうしよう…とY医師は悩みました.
患者さんに飲酒歴を尋ねたところ,1日に缶チューハイを3~4本,食欲が低下してきたこの数か月の間も以前と変わらない量のお酒を毎日飲んでいたとのことで,低栄養,脱水,ビタミンB1欠乏の可能性が考えられました.
ERでは原因の特定に至らないまま総合内科に入院することになったこの患者さんは,当日中にはバイタルが安定,背部痛も改善し,5日後に退院となりました.
岩田先生からは
「思いのほか,このような症例は多いですね.よくわからないけど重症そう…というケースは,ラクテートに注目する.見慣れないショックの場合は薬剤と生活習慣に注目するのも大事です」とコメントがありました.
Y医師は,
「このような見慣れないショックのケースに出会って,ショックの原因検索の幅を広げるきっかけとなりました」と話していました.
Y医師の経験した症例を参加した研修医全員で考え,ERでの思考過程を共有し,頭の中を整理することができました.1人でできる経験は限られたものですが,こうして共有することで全員がレベルアップできます.
岩田先生,ありがとうございました.
次回は11月末に開催予定です.
卒後教育研修センター
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