藤田医科大学 救急総合内科教授の岩田充永先生には
月に一度当院のER症例振り返りカンファレンスにファシリテーターとしてお越しいただいています.
8月28日の救急カンファレンスはオンラインで開催されました.
今回は研修医1年次のY医師が症例提示をしました.
5月,ERローテが始まって間もないある日,朝8:20頃の当直帯からの引継ぎの時間に救急搬送された患者さんです.
患者さんは70歳代の男性,社宅に住んでいる隣人がバタンという音を聞いて玄関の戸を開けると男性が倒れているのを発見,救急要請しました.男性は意識を失って倒れたようでした.
救急隊によると,男性は意識を取り戻し,開眼しているものの目線が合わないようだということです.倒れたときに頬を打ち,擦過傷がありました.
到着時,少しぼんやりした印象ではあるものの意識はクリアな状態で,SpO2が低下していました.患者さん本人によると,トイレに行こうとしたら嘔気を感じ,その後倒れたようだということでした.
Y医師は,JCSは0と判断.SpO2低下ですが胸部レントゲンには肺炎などの所見は認めません.
ここで岩田先生からの問いかけ!
JCSが0かⅠか,それによって鑑別が変わってきますよね⁉
失神プラスSpO2低下はどんな鑑別が挙げられるでしょうか?
岩田先生の問いかけに,参加した研修医たちは考えます.
Y医師は不整脈を疑い,心電図と心エコーの検査を行いましたが不整脈の兆候は認めませんでした.次に行うべき検査として,転倒時に擦過傷ができるほど頭を打っていることから,頭部CTが必要ではないかと考えたY医師でしたが,上級医は体幹部の造影CTをオーダーしていました.
ここで岩田先生からの問いかけ!
Y先生は何を疑ってその検査が必要だと考えたのでしょうか?
自分の考える検査と異なる検査を上級医が行っていて,Y先生はどう思ったのですか?
造影CTの結果,肺塞栓症であることが判明し,患者さんは循環器内科の専門医のもと適切な治療を受けることになりました.
あとから振り返ると,所見,検査結果,すべてが線となってつながりますが,経験しないとわからないものです.早い時期にこのようなケースを経験できたことはY先生にとってよいことでしたね,と岩田先生.ERでの診察の鉄則は○○を疑って××の所見を探しに行くという診方,そして自分の考えと違うことを上級医が行っていたときにはその場でなぜそれが必要なのか聞けるといいですね,とおっしゃっていました.
研修が始まって1か月足らずの時期だったY医師にとって,今回の症例はとても学びの多いものになりました.
1人で経験できる症例は限られていますが,こうして1人の経験を共有することで全員がレベルアップできます.
1年次,2年次研修医とレジデントやスタッフ医師も参加し,充実した勉強会となりました.
岩田先生,ありがとうございました.
次回は9月末,オンラインでの開催予定です.
卒後教育研修センター
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